えんま堂



神津島の前浜漁港から臨める岩壁の根元に、ぽっかりと穴が空いている。その洞窟には、閻魔様などが祀られている。今でこそ道路により海と隔絶されてしまったが、当時は入口付近まで波で洗われていた。洞窟の中から外を見ると島の海が広がり、昔の様々な想いを持った状態で見る海を想像すると、
流人の島であった過酷さ、海の偉大さなどをうかがえるであろう。
【案内板】

えんま洞
『切り立つ岸壁の下の洞窟は、微笑を浮かべている閻魔が祀られている。
少し暗い洞窟の中には、入り口に向けて石積みの祭壇が有り、そこに五体の石仏が並んで居る。

右から二体は地蔵菩薩像で、次が微笑みを浮かべる閻魔の石仏(写真だと一番右)、

その次はかなる磨耗しているが、これも閻魔の像と思われる。

左端の磨耗の激しい石仏は、地蔵菩薩と言われている。

また、祭壇の上の岩の裂け目に蓮台に乗り、右手に宝剣、左手に宝珠を捧げ持つ石仏を大日如来としているが、
対日如来であれば智拳印または法界定印の印相を示していると思われるが、どうであろう。

普通、閻魔は佛法守護の為、憤怒の相をしているが、ここに祀られている閻魔の石仏は、
笑顔で優しい雰囲気を滲ませ、因みに仏教が我が国に渡来した当時の閻魔は、微笑を湛えていたもので、
憤怒の相になったのは近世になってからという。
石仏の前には季節の花や、果物と千菓子が供えられ、短い線香がまだ煙を燻らせていて、
島人に大切に祀られていることが判る。
閻魔洞の由来については、無実の罪に泣いた流人が祀ったとか、
己の犯した罪の重さに怖れた流人が贖罪の証として祀ったものとか語られているが、
小さい蝋燭の灯火が風に揺らぐと、少し首を傾げた微笑の閻魔の表情が一瞬泣顔に見えるので、
その時、閻魔洞の由来を思い出させられるのである。』
平成十五年八月一日 神津島村教育委員会
